「いだてん」って本当は何者?(韋駄天生誕の秘話)

Last Updated on 2023年12月16日 by admin

「いだてん」見てますか?韋駄天―昔は足の早い人のことをよくこう呼んだそうです。

今はほとんど死語になりかけたこの言葉が、ドラマのお陰で一躍注目を集めていますね。

見ている人も見てない人もこの際韋駄天についてチョッと面白い話を小耳に挟み、心の滋養にしましょう。

  MLMオンライン(インターネット)集客  

韋駄天とは

仏教の守り神の一神です。四天王の一神、増長天の下の三十二将のうち最も大事な役割を果たす天とされています。

伽藍や厨房・僧房を守り、子供を病気から守る護法神として祭られています。

非常に足が速く、仏陀入滅の際捷疾鬼(しょうしつき)が仏舎利を奪って逃げた時に、それよりももっと早く走り、追いついて仏舎利を取り返したことから「韋駄天走り」と言われるようになったと伝えられています。

それ以降足の速い人のことを「韋駄天」と呼んでいます。

韋駄天、名前の由来

韋駄天はヒンズー教の軍神スカンダが仏教に帰依した後の名前です。

シヴァ神の次男として生まれ、生後4日ですでに非常に強くなったので、年若くしてインドラから神軍最高司令官の地位を譲り受けたと言われます。

この最強無二の軍神がある日仏陀に出合って諭され、今までの己の非道な行動を反省し、仏門に帰依して韋駄天となりました。

ヒンズー教では神は善悪二面性を持っていて、創造と破壊・平和と争いが常に合体していますので悪の面は持っているのが普通です。

スカンダは軍神として戦いに明け暮れたこれまでの業を非常に恥じ、反省しましたので、仏陀から「」の称号を与えられました。

仏教では「天」の称号は他宗教から改宗した中でも行いの良い者に与えられます。また普通宗教を普及させる際は、地元にもとからある宗教に迎合し、無理のない方法で吸収、合体していくのが常道です。

地位が高く、しかも民族の支持の高いスカンダに天の称号を与えることで、地元に根付いている旧宗教との摩擦を避け、地元の人々の理解を得る為の必然的手段とも言えます。

当初はスカンダ天を「塞建陀天」、「私建陀天」と漢字表記しましたが、「建陀天」と省略され、更に写経の誤写によって「偉駄天」となり、その後道教の韋将軍と混同して「韋駄天」となりました。

韋駄天は非常に信心が厚く、仏陀の為に尽くしました。弱った仏陀の為にあちこち食べ物を探し走り回ったことから、「ご馳走」という言葉が生まれたとも言われています。

以上参照: 広辞苑
貝瀬弘子氏、講義より
望月信成・佐和隆研・梅原猛著「続、仏像、心とかたち」NHKブックス

韋駄天:ウィキペディア

 

彫像の容姿

像容は道教の影響で、唐風の亀甲をまとい剣を持った若い武将の姿が多く見られます。

しかし本来はスカンダの別名クマーラに由来し、六面十二臂(6つの顔と12本の腕)で、孔雀に乗り槍を持つたヒンズー教の青年の姿で表されています。

何故この様な姿で表されているのでしょうか?

6人の乳母から育てられた故という説

6人の兄弟が合体した姿という説

スカンダの母、パールバティが6人の子供を産み、どの子もどの子もみんな可愛いくてたまらない。

あまりの可愛さに6人の子を一度にぎゅ~っと抱きしめたら、顔と腕を残しみんなくっついて一つの体になってしまった。

パールバティは愛おしさのあまりに母乳が自然に湧き出てきたという説

等々様々な言い伝えもありますが、この容姿の由来こそが韋駄天の出生の秘密なのです。

韋駄天出生の秘密(「マハーバーラタ」による)

「マハーバーラタ」は「イーリアス」「オデッセイア」と共に世界の3大叙事詩の一つです。

また「ラーマーヤナ」と並んで、インドの2大叙事詩とも言われています。宗教的、哲学的、神話的叙事詩で、ヒンズー教の最も大事な経典とも言われています。

この中にスカンダの出生の秘密が書かれています。

 

スカンダの父(代理父)アグニは7人の精仙の妻たちを恋慕していましたが、自制して不倫をしませんでした。

アグニに恋するスバーハ―(スカンダの母・代理母)はそれを知り、次から次へとその精霊の妻たちに化けアグニを誘惑しました。

貞操の堅い1人の妻を除いて、首尾よくアグニと6回性交することができ、1回ずつその精液をアシュベータ山の黄金の穴に落としました。

そしてその黄金の穴からスカンダを誕生させることに成功したのです。

従って下半身はスバーハー1人で顔と腕が6人の聖仙の妻たちに表されているということでしょうか。

6回分の精液によって生まれたスカンダが非常に強いのは納得がいきますね。

 

その後スカンダがシヴァ派に吸収、合併された時、スカンダはシヴァ神とパールバティの子とされました。

つまりスカンダの父アグニと母スバーハーが性交している時にシヴァがアグニに乗り移り、パールバティがスバーハーに乗り移ったと考えられたのです。

そしてアグニとスバーハーは代理の父母としての役割だったと解釈されました。

おわりに

韋駄天走りから意外な方向に発展してしまいましたね。

休日の夜のひと時現実の世界から目をそらし、時空を超えてこの様な壮大なロマンを思い浮かべてみるのも一興ではないでしょうか。

普段はあまり使わない右脳を使うと心身が大変リフレッシュして、明日からのお仕事に良い刺激になること請け合いです。

どうぞお試しあれ!