Last Updated on 2023年12月16日 by admin
ライティングと心理学 返報性
人は何か与えられると、無意識のうちに「その人に対して返さなければならない」と恩義を感じるようになります。これが返報性の原理です。
人は一方的に施しを受けると、潜在意識下で非常に不安定な状態になり、その施しに対してお返しをしようとします。
これは人類が、有史以来、共同生活をしてお互いが助け合って生活してきたためです。恩を返すことがまったく理に適った行為であり、そうすることが遺伝子にプログラミングされているのです。
目次
ビジネスのいたるところで用いらる返報性の原理
スーパーに行けば、試食コーナーで商品を食べてみることができますし、化粧品コーナーであれば、スタッフの人が、キレイにメイクをしてくれる場合がありますよね。
このように、まずは売る側からアクションを起こし、先に「与える」必要があるのです。
そうすることで、顧客は「ここまでやってもらったし…」と恩義を感じて製品を買ってくれるきっかけになります。
- 返報性をビジネスに生かした例
- 「まずはお試し下さい。30日間の試用後にご購入の意思を確認」
- デパートやスーパーの試食品
- 「無料サンプル差し上げます」
- お得意様限定利益還元セール
- 展示即売会での試着・試用
- 保険外交員が契約前にくれる粗品
- 新聞販売店が契約前にくれる粗品
「返報性の原理」を実証する
心理学の古典であり、バイブルでもある「影響力の武器」には、返報性の原理を実証する実験結果が記載されています。
心理学者のデニス・リーガン博士による実験です。
2人1組の実験で、1人が飲み物を買いに行った時に
A:自分の飲み物だけ買ってくる
B:相手の分の飲み物も買ってくる
その後に「福引のチケットを買ってもらえないか?」とお願いをする。
という極々シンプルな実験です。
この結果、Bの「飲み物を買ってもらった人」のほうが、Aに比べてチケットの購入率が2倍も高かった、という実験結果になったのです。
「返報性の原理」によって、人の行動は大きく変わることがわかります。
好意の返報性
また、何かを与えられると相手に対して好感をもつ、という効果もあり、恋愛においても返報性の原理は使われます。
相手に好意を示すと相手もこちらに返そうとしてくれる心理が働き、これを「好意の返報性」と言います。
好意の返報性はビジネスの場面でもよく使われます。
日常生活の中でよく目にするのが、無料の試供品を配布するというマーケティングのテクニックです。
サンプルを配ってその製品の良さをアピールする狙いもありますが、無料の試供品が一種の贈り物であることから、無意識のうちに好意の返報性が威力を発揮します。
アムウェイも使った「返報性の原理」
アメリカの日用品を販売しているアムウェイ社は、言わずと知れた世界一の売上高を誇るネットワークビジネスの会社ですが、バッグ(BUG)と呼ばれるやり方の中で無料の試供品を提供しました。
バッグは、アムウェイ社製の商品(家具用クリーナー、洗剤、殺虫剤など)をひとまとめにして顧客に届けられます。
また営業の極秘マニュアルとして「無償で試供品を1~3日使ってもらう」という手法を採用しました。
試用期間が終わると、販売員はその家庭に戻っていき、顧客が買いたいと思う製品の注文を取ります。顧客側は「無料の試供品」を受け取った時点で「好意の返報性の魔力」にかかっていました。
当時のアムウェイの販売員たち自身もバッグの驚異的な効果に当惑していたと言います。
今となってはどこの会社も取り入れているスタンダードな手法だと思えますが、ひとつの企業を急成長させるほどの力が「好意の返報性」にはあると言えるでしょう。
譲歩の返報性(ドア・イン・ザ・フェイス)
「譲歩の返報性」とは、自分から譲歩することによって、相手に恩義を感じさせ、相手も譲歩しようとする心理で、交渉の現場においてよく使われます。
適正な条件を最初から提示するのではなく、高い条件を提示して、相手に拒否させ、譲歩する、というステップを踏みます。そうすることによって「譲歩の返報性」の心理が働き、適正な条件を通りやすくさせるのです。
「影響力の武器」には、「譲歩の返報性」に関する実験についての記載があります。
アメリカの心理学者ロバート・B・チャルディーニは以下の実験をしました。
あるグループにはドア・イン・ザ・フェイス(譲歩の返報性)を使い
「3年間にわたり1週間に3時間、衛生局で、無償で働いてください」と最初に無理なお願いをします。
次に、本来の要求である「1日だけ衛生局で、無償で働いてください」と要求を引き下げた場合は、74%の人が承諾しました。
もう一方のグループには、最初から「1日だけ衛生局で、無償で働いてください」と、本来の要求を単刀直入にしました。その結果、29%の人が承諾しました。
そして、前者の被験者でYESと言った人の85%(全体の62%)、後者の被験者でYESと言った人の50%(全体の14%)が、実際にボランティアとして足を運んでくれる結果となりました。
ドア・イン・ザ・フェイス(譲歩の返報性)を利用したことにより、普通に頼んだ場合の4倍以上の人が、実際に承諾し行動してくれたことになりますね。
自己開示の返報性
自己開示というのは、「自分についての情報を相手にありのままに伝える」ということです。
心理学的に返報性の原理が働き、自己開示をされた受け手も同じように自己開示をしたくなります。
例えば、こちらが趣味の話をしたとすれば、相手も同じように趣味の話をしてくれる可能性が高くなります。
この効果を利用して、ある程度深い話をすることで、相手からも深い話を引き出すことができるのです。
「相手がそこまで話をしてくれたのであれば、自分も同じように話をしなければならない」という気持ちになり、関係性を深めることができるのです。
ウェブマーケティングへの応用
ブログやメルマガで惜しみなく情報を公開するのも、この返報性の原理に則っています。
ですので、情報発信する際には、決して出し惜しみせずに有益な情報をガンガン出すべきなのです。
そうすれば、読者はあなたを「有益な情報を与えてくれる人」と認識して、あなたのファンへとなっていくわけです。
無料レポートなんかもそうですね。無料レポートスタンドに登録しているレポートをダウンロードしてみたことがある人ならわかると思いますが、中には「無料でこれだけの情報量!」と驚かされるものも少なくありません。
そして、たいていの場合、レポートの最後に、「私のブログを訪問してください」とか、「メルマガに登録してください」といった類のことが書かれています。
その無料レポートの情報が有益であればあるほど、読者は恩義を感じて、その著者のブログを訪問したり、メルマガに登録したりするわけです。
ただし、この無料レポートの質が悪いとまったく逆効果になります。
中には、「どうせ無料なんだから」と完全に手を抜いて作ったようなスカスカなレポートや、宣伝ばかりのレポートも存在しますが、そんなレポートを公開しても反感を招くだけです。
たとえ無料のものでも、価値あるものを提供してこそ、返報性の原理が働くようになるのです。