Last Updated on 2023年12月16日 by admin
目次
はじめに
トランプ大統領が就任してから早や一年半。今や氏がくしゃみをすれば日本が風邪をひくという状況で、先日もその影響で円高ドル安となったばかりです。氏は日本のみならず世界中でくしゃみをして風邪をばらまいています。
前任のオバマ氏とこれほどまでに違う氏の言動に世界中が対応に追われています。なぜこうも違うのでしょう?そこにはトランプ氏がオバマ氏を嫌い敢えてその逆を行くスタンスが見え隠れしています。その真意を探ってみましょう。
トランプ氏がオバマ氏を嫌う理由
白人対黒人
トランプ氏は強い人種偏見を持っています。オバマ氏は黒人で、しかもアメリカ生まれではないから大統領の資格がないと以前から言い続けてきました。ホワイトハウスがオバマ氏の出生証明書を示しても、「その様な手はいくらでもある」と言って聞きませんでした。
これに拍車をかけたのは一枚のプロフィールです。オバマ氏が若かりし頃出版した本のパンフレットに、ケニア生まれと書かれていたのが最近発覚したのです。このプロフィールを書いた担当者がこれは単なる間違いだったことを表明しましたが、トランプ氏や彼の支持者の考えを変えることはできませんでした。
驚いたことに多くのアメリカ人がそう思っているということです。白人保守層の32%が、オバマ氏は外国生まれだと考え、19%は、どこで生まれたかわからないと答えたアンケートもあります。白人保守層の過半数が、オバマ氏がアメリカ人かどうか疑っていることになります。
キリスト教徒対イスラム教徒?
もっと驚いたことに白人保守層の約3分の1がオバマ氏がイスラム教徒だと信じていることです。そしてイスラム原理主義者と通じ、裏切り者の売国奴だと言うのです。
トランプ氏の支持者の多くがそう信じ氏自身もそう主張しています。氏はイスラム教偏見が強く「イスラム教徒をアメリカ入国禁止にすべきだ」と言ったり、9.11をイスラム教徒による事件だとし、「ジャージーシティで何千もの人(イスラム教徒)が、世界貿易センタービルの倒壊を見て喜んでいたのを、私はこの目で見た」とツイートしています。
※ Trump’s outrageous claim that ‘thousands’ of New Jersey Muslims celebrated the 9/11 attacks
オバマ氏がイスラム教徒だと考えるトランプ氏がオバマ氏を目の敵にするのは頷けます。
共和党対民主党
アメリカは約160年以上この両極端の党が交代劇を演じています。大雑把に対比してみますと下記の通りです。
トランプ氏の共和党対オバマ氏民主党
北部対南部
保守対リベラル
福音派(ティーパーティー)対多宗教
全米ライフル協会対アメリカ労働総同盟、有色人種、
不法移民反対対賛成
銃規制反対対賛成
医療保険反対対賛成
というふうに全く正反対の考え方・政策ですのでお互いに歩み寄るしか解決策はありません。トランプ氏にとってオバマ氏は別の主義を唱える理解できない人に過ぎないのです。
現実主義対理想主義
トランプ氏は実業家から大統領になった人ですので何よりも実利を大切にします。政治も経済同様損得勘定で考えますので、オバマ氏の様な現実にそぐわない夢の様なお話は好みません。
氏は大統領就任演説で暗にオバマ氏を批判し、自らの主張を訴えました。「私たちは、語るだけで、行動しない政治家は受け入れない。空虚な話をする時は終わった。今、行動する時が来たのだ」と。
※ 大統領就任演説はトランプ大統領の“ポピュリスト革命宣言”-歴史からみた評価
5月21日サウジアラビアでの演説でテロ対策について「イスラム諸国も米国も応分に負担すべしとし、「米国は共有する利益と安全のため皆さんを支援する用意がある」と述べたうえ、「我々は講義をするためにここにいるのではない」「融通のきかない抽象論ではなく、実際に起きた出来事に基づいて物事を決める」と現実主義のスタンスをはっきり表明しています。
一方オバマ氏は2009年6月、エジプトのカイロで中東政策について演説した際に「米国と世界中のイスラム教徒の新たな始まりを求めてここにやってきた」と言っています。ブッシュ政権で始まったイラク戦争で深まった米国とイスラム社会の溝を修復するために米国は努力を惜しまないことを述べました。
しかしオバマ氏はアラブ諸国にも人権や民主主義の重要性を説いたため、諸国から非現実的な「机上の空論」と言われたりもしました。
アメリカ第一対共存主義
トランプ氏は就任演説でこれまで何十年間も自国の政治、経済、軍事、国境等を犠牲にして他国の為に寄与してきたと嘆き、これからは「アメリカ第一」を新しい信条とすることを誓いました。
オバマ崩し
そしてその通りオバマ氏が尽力して築き上げたTPPから撤退し、イラン核合意も離脱しました。オバマ崩しが本格的な始まったのです。
そして次から次へと各国に厳しい条件を突きつけ、日本や韓国等の同盟国も例外ではありません。
日韓の核保有について
アメリカの傘下ではなく自身で核兵器を保持することは「アメリカにとって好ましいこと」だと主張し「アメリカはかつては強い軍事力を持った裕福な国だったが、今は違う」と述べ、両国がアメリカ軍の駐留経費の負担を大幅に増額しなければ撤退もさせるとも主張しました。
※ トランプ氏「日本の核保持は否定しない」 在日米軍撤退にも言及【アメリカ大統領選】
日米安全保障条約について
「アメリカが攻撃されても日本は何もしないが、日本が攻撃されたらアメリカは駆けつけなければならず、不公平だ」としたうえで、「再交渉したい」と述べました。
NHKニュース2016/03/27 より
※ トランプ氏「日本の核保持は否定しない」 在日米軍撤退にも言及【アメリカ大統領選】
激情型対冷静沈着型
トランプ氏は実業で鍛えられ頂点に達したという経歴の為か揺るぎない自信と激しい気性を持ち、喜怒哀楽に従って行動する人です。温厚でいつも微笑みを浮かべ、感情を表に出さず物事を論理的に考えるオバマ氏とは全く正反対です。
理想の上司や理想の父親等によく選ばれるオバマ氏はトランプ氏にとって鼻持ちならない「目の上のたん瘤」に相違ありません。白か黒かはっきりさせたいトランプ氏にとって、オバマ氏は優柔不断な太い奴でしょう。
トランプ氏が気分屋で怒りっぽい証拠を挙げてみましょう。
イラン脅し
5月トランプ氏はオバマ氏が主導・尽力したイラン核合意から離脱しイランへの経済制裁を復活し、日本や欧州などにイラン産原油を輸入しないように要求しました。
これに反してイランのロハニ大統領は自らの政治努力が水の泡となり、「ホルムズ海峡の閉鎖もありうる」とトランプ氏に反論したところ、トランプ氏は22日自身のツイッターですべて大文字で「米国を二度と脅すな。さもないとかつて無いような報いを受けることになる」と脅し返しました。
二日後、その舌も乾かないうちにミズーリ州での演説で「前政権が行った酷い取引ではなく、本当の取引をする準備がある」と語りました。この変わりようはどうでしょう。その時の風まかせの気分屋としか言いようのない対応ではありました。
腹いせにライバルの携帯番号を暴露
リンゼー・グラム上院議員から「間抜け」と呼ばれ腹を立て、グラム氏の携帯番号を読み上げ「正しい電話番号かは知らない。試してごらん。はっきりしないヤツだが、話し相手にはなるだろう。」といった感情主導で行動する子供じみた面も多くあります。一国の宰相になろうとしていた時の話ですが……
※ Trump bashes rival Graham, gives out fellow Republican’s phone number
支持層の違い
トランプ氏の熱狂的な支持者は共和党の中でも一部で、サイレントマジョリティーともヒルビリー(田舎者)とも言われ、劣悪な環境の中に育ち政治からも社会からも見放され、明日への希望の光を全く見いだせない人々が多数です。
自分が貧乏で不幸なのは社会や国の責任で自分の責任ではないと考えます。つまり黒人ながら数々の困難を乗り越え、努力して頂点に登り詰めたオバマ氏とは正反対の人々で、オバマ氏のことは大嫌いです。
参照:J.D.ヴァンス氏 トランプ支持者はオバマをなぜ「憎悪する」か
トランプ氏はメディアを通さずツイッターで直接国民に話しかけています。氏も支持者共々メディアを信じない人々なので、相乗効果が生じます。
トランプ氏がツイッターで既成政治の悪口を言い、オバマ氏を誹謗中傷するのは彼らにとって唯一の楽しみで、氏が相手を激しく非難すればするほど彼らは胸がスッキリするのです。トランプ氏はこのような支持者の、理論ではなく感情に訴えそれを利用することに成功しています。
オバマ氏も低賃金労働者の支持を得て大統領になりましたが、支持層はもっと広く、有色人種・環境保護団体・知識人・ジャーナリスト等トランプ氏とその支持者が大嫌いな知性的で感情ではなく理論的に考える人々が多くいます。建て前ではなく本音に訴えたいトランプ氏にとっては煙たい存在に違いありません。
まとめ
これほどまでに違うオバマ流とトランプ流。オバマ氏の真逆を行くトランプ氏は支持者からは豪快で頼もしいリーダーとして歓迎されるでしょうが、そうでない人々には全く理不尽なものでしょう。
米国を二分するこのアトラクティブな言動は吉と出るか、凶と出るか、同盟国の一員として気にしない訳にはいきません。我等は当分の間このトランプ劇を固唾をのんで見守ることになるでしょう。トランプ氏によって引き起こされた風邪が命取りにならないように気を付けながら。