働き方改革法案ゴリ押し成立、封じ込まれた問題点

6月29日野党の大反対の中、働き方改革法案が参院も強引に成立し、7月6日公布されました。

みんなが働きやすいようにと考えられた法律が、実は大きな問題を含んでいる欠陥法律だった訳ですね。

何が問題なのでしょうか?ここでもう一度考えてみましょう。

 

働き方改革法とは

正しくは「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」といいます。

安倍総理が推奨する一億総活躍時代に向けて、国民各自がそれぞれ働きやすいようにと考えられたありがたい法律です。

分かりやすく言えば「国民全員が死ぬまで安心して働けるように環境等を整備する法律」とも言えます。

参照 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律

 

 

働き方改革法の目的

労働力の増加と強化

日本は世界で稀な少子高齢化社会の先端を進んでいます。おまけに人口減少も激しくなっています。

参照 誰でもわかる!少子高齢化問題と対策方法

また育児や介護との両立が困難なため仕事を辞める人も増えています。

そのため生産年齢人口はドンドン減りこのままだと国の衰退は抑えられません。

なんとかこの状況を止め、様々な状況下でも働きやすくし、働ける人はみんな働けるようにと考えられたのがこの法律です。

年をとっても元気なアクティブシニア・ワーキングマザー・時短勤務者・契約社員・老いも若きも働きやすくして労働力不足に備えましょうということですね。

 

働く人の様々なニーズに答えるための環境整備

働く人がそれぞれの事情(育児や介護との両立など)に応じて様々な働き方を選択できる環境を整えること。

そうして就業機会を増やし、各自の能力を十分に発揮しつつ、ワークライフバランスのとれた生活へと誘うものです。

参照 「働き方改革」の実現に向けて

 

労働生産性の向上

日本は勤務時間が長い割には生産性が低く、時間対比の労働生産性はOECD加盟35カ国中20位。主要先進7カ国の中では最下位、平均値まで達していません!第1位のルクセンブルクは95.0ドル (10,006円)で、日本の2.3倍とのこと!!

参照 労働生産性の国際比較 2016 年版 公益財団法人 日本生産性本部

長く働くことを良しとする従来の国民的慣習を止めて、時短で効率よく生産性を高めることを目指します。

 

長時間労働の是正

上記の通り勤勉な国民性のため長時間残業が慣習化。労働者の健康を損ねることも多く、2013年には国連から是正勧告まで受けました。

にも拘らず最近でも大手企業の社員が長時間残業で過労自殺するという事態が起こりました。

 

大手でさえこの有様、まして中小企業ではどうでしょう?

長時間労働はまた女性の社会進出を阻み、晩婚化・晩産化に繋がり出産率を引き下げ、更なる少子化・人口減少へ繋がります。

もはや企業だけに任せられる問題ではりません。国が主導して官民一体となって問題解決に努める必要に迫られているのです。

メインの法案を見てみましょう。

 

 

新法での改善点

残業時間の上限規制

今まで規則がありながら36協定を結ぶことにより際限なく引き伸ばされた残業時間。今回は原則月45時間で年360時間以内、繁忙期でも月100時間未満、年720時間以内と厳しく規制しました。

いくら法律で規制しても実行されなければ何の意味もありません。今回は数々の過労死を省みてこれを徹底するために罰則(刑事罰)を設けたところが改善点です。

大企業2019年4月~、中小企業2020年4月~施行

 

有給休暇の義務化

今迄は労働者の希望がなければ取得させなくとも違法ではなかった有給休暇。

今度からは年10日の有給休暇がある労働者には、希望がなくても年5日企業側から取得させる義務が生じました。

全企業2019年4月~施行

 

勤務間インターバル制新設

勤務と勤務の間に休息を入れることを推奨しています。今までは夜遅くまで仕事をしてそのまま次の日の仕事に入る、あるいは仮眠だけで仕事をするようなことが横行していました。この長時間労働によって様々な問題が頻繁に起こっていたのですね。これからはそれを避ける為に、勤務終了から少なくとも10時間か11時間は間を置き心身を休めることを推奨しています。

残念ながらこれは「努力義務」ということで法的拘束力はありません。今回は意識喚起だけでもある程度の価値はあるでしょう。今後の進展に期待するところです。

全企業2019年4月~施行

 

労働時間を正しく把握

労働時間の状況を省令で定める方法(タイムカード等)で把握すること。客観的な方法で正しく把握して時間管理を行うこと。

 

中小企業も割増賃金率適用

残業時間が月60時間を超えた場合は割増率を50%にしなければならないという法律は今までは中小企業には猶予されていました。今回これを廃止し、全ての企業に適用されます。2023年4月~施行

 

フレックスタイム制推進

多様な働き方をすることができるように配慮された法律です。

今まで1ヵ月だった清算期間が3ヵ月に延長されました。今度は子供が夏休みの時は時短にして、他の日に長くできる。介護中の親がショートステイの時は長時間働き、自宅に戻ったら時短にするとかフレキシブルに働くことができますね。

 

産業医の強化

企業での労働が身体的・精神的に無理なく行われているかどうかを確かめるために、産業医の権限が強化されました。企業は健康管理に関する情報を産業医に提供する義務を負います。

2019年4月~施行

尚産業医の選任義務があるのは従業員50人以上の職場なので、それ以下の小企業にはまだまだの感がありますね。

 

同一労働同一賃金

長い間問題となっていた正社員と非正規社員の格差。

参照 正社員と契約社員、黙認できないこの格差

最近裁判でもこの格差を違法とする審判が相次ぎ、ようやく日の目を見ることになった非正規社員。

今回法律でもその身分を証明されることになりました。

 

同様の仕事をやっているのなら正社員も非正規社員も同じ給料・諸手当・昇給・賞与にしなければならないことが法律で決まったのです!

責任の重さや仕事の質などの差がある場合は含まれません。

大企業2020年4月~、中小企業2021年4月~施行

 

説明義務

非正規労働者について、正規雇用労働者との待遇差がある場合はその内容・理由等に関する説明をしなければならない。

しかし現実はどうでしょう。弱い立場の労働者はうやむやにされてしまう恐れがありますね。

そこで上記6の義務や7の説明義務については行政が立ち入り履行されるように監査したり、行政ADR(裁判外紛争解決手続き)を整備するというのです。これはありがたいですね。

2020年4月~、中小企業2021年4月~施行

以上ざっと見るととても良くなっているような気がしますね。どこが問題なのでしょう?実は次なる新制度に問題が隠れているのです。

 

新設、高度プロフェッショナル制度とは

高度な専門的知識を持つ高収入(概ね1千万円以上)の労働者がフレキシブルに働けるようにした新しい法律です。

本人が希望して労使委員会の決議があれば、労働基準法による労働時間や休日・深夜割増賃金の規定を守らなくても良いというもの。

金融ディーラーやコンサルタント等を想定しています。

 

健康確保のために年104日の休日義務と①インターバル措置、②1月又は3月の在社時間の上限措置、③2週間連続の休日、④臨時の健康診断のいずれかの措置を義務化しています。また在社時間が一定時間を超える場合は事業主は医師の面接指導を受けさせる義務を負います。

 

高プロ制度の問題点

基礎データがでたらめ

調査データに様々な誤りや不備が見つかり問題となった裁量労働制、今回は法案から削除されました。

ところが高プロ制度の審議資料「平成25年度労働時間 等総合実態調査」にも間違いが発覚。

2割強の事業所分の労働時間データ が削除されました。

その後も2重コピーなど虚偽データが6件も発見。残りのデータも信用できるかどうか疑わしいばかりです。

 

また、厚労省が高度プロフェッショナル制度のニーズを聞き取り調査したのは企業が選んだ労働者たったの12人で、しかも企業側も同席したとのこと。

このような状態で正確な調査はできるはずがありません。

 

残業代ゼロ法律、過労死激増法律

一応の健康に対する配慮はなされているものの時間制限なし、割増賃金は一切ないというものです。

 

省令次第で条件が変わる

「高度プロでもないし、おまけに1千万の収入なんて私には関係ないわ!」というアナタ。

それが大いに関係あるのです!

この法律は細かい規定がなく、多くは(62項目も)省令で規定されるので国会の承認が不要となることです。

つまり各省庁で独自の省令を定めれば

・1千万が400万に適用されれば多くの人が対象となり、残業代ゼロ・過労死へ

・研究開発職やコンサルタント等から業種を広げれば多くの人が対象へと替わりうるのです。

 

法令の細部が不備

・出退勤時間や仕事の裁量権などが何も書かれていない。省令で決める。

・雇用側に時間管理の義務がないので、間違えて採用された場合など残業時間を計算できない。

・過労死など事故があった場合も時間計算などができないので労災認定ができない。

など他にも多くの問題点が封じ込まれた法律だったのです。

参照 「働き方改革」一括法案の12の問題点 2018年6月7日 自由法曹団

参照 (朝日社説)働き方改革 「高プロ」制度も削除を

 

終わりに

働き方改革法はもともと長時間労働を是正し、働きやすい環境にするために作られたはずなのに。その真逆を行くのが高プロ制度です。

きれいな包み紙で封印されたこの法律は、野党に見破られ大反対に合いましたがゴリ押し成立。

法制化された今となっては、せめて省令を制定する前に今一度労使双方の忌憚のない審議を十分に尽くしていただきたいと願うばかりです。

どうすればこの法律が本当に働く人にとって頼りになるものになるのでしょうか?

それを考えることはこの国にとっても大切なことだと思いませんか?

 

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