Last Updated on 2024年8月28日 by admin
長い間議論されながらも、法案提出に至らず未解決状態が続いているサマータイム問題。
オリンピックを機に解決が急がれていましたが、9月27日ついに今回は「見送り!」が決定。
開催前に導入して暑さ対策をと考えていた関係者たちをガッカリさせました。
システムなどの対応と世論の反応から物理的に難しいという理由からです。(9/28朝日新聞)
今回はこのサマータイムについて詳しく調べてみましょう。
目次
サマータイムとは
夏時間のこと。ヨーロッパではサマータイム(summer time)と言い、アメリカではデイライト・セービング・タイム(daylight saving time)と呼ばれます。
日照時間が長い夏の間標準時を1~2時間進める制度で、時差出勤とは全く別のものです。
始める時は一斉に時計を1時間(2時間)進め、時期が終わるとまた一斉に時計を遅らせます。
早起きして明るいうちに仕事をし、アフター5を充実させようというものですね。
省エネ、ワークライフバランス、経済活性化の観点から導入が検討されています。
尚日本で導入する場合は法改正が必要です。
なぜオリンピックに必要か
今回の法案提出の目的は主に2020年の東京五輪の為でした。
7月下旬に開始、一番暑い中で行われる五輪。その暑さ、熱中症対策としてサマータイムを導入し少しでも涼しい時間帯にやろうというものです。
そもそも時期をずらせば良いと欧米諸国から言われていますが、これはオリンピック委員会の都合で、日本としてはどうすることもできません。
では開始時間を早めれば良いと思いますが、時間が早いとボランティアなどの準備が整わないとのこと(遠藤利明・五輪実施本部長)。
秋の臨時国会に通したかったのに残念ながら見送られました。
たとえこの法案が国会を通ったとしても、行政のコンピューターシステムの改修には5年はかかり物理的に困難と判明したからです。
ではなぜ時計の針を動かしてまでサマータイムを実施するのでしょうか?そこにはそれなりのメリットがあるからなのです。
サマータイムのメリット
健康的な生活
人間はもともと太陽と共に行動する動物です。朝早く起きて行動することは理にかなっている。
・早起きによりうつ病改善(この逆を言う学者もいます)
・太陽の恩恵(ビタミンD)によりくる病予防、免疫力UP。特に日照時間の少ない北欧や北米では貴重)
・運動不足の解消
等人間らしい生活に近づけます。
省エネ効果
暑い時期、朝の涼しい時間帯に仕事を始め夕方早く終わらせることで省エネ効果、温室効果ガス削減効果が期待される。
日本生産性本部の平成16年の報告書では、原油換算で93万キロリットル分といいます。これは全国民が使う冷蔵庫の消費電力40日分に当たるとのこと。
交通事故、犯罪が減る
明るい時間帯に行動するので視界が妨げられず、交通事故が減ることが他国の例で明らかになっています。
日本の交通事故は現在夕方4時~5時が一番多いので、この時間を避ければ30%も減る!また犯罪も減るとも言われます。
夕方の時間を有効に使える
仕事帰りにショッピングをしたり、映画やスポーツジムに行ったり、休日しかできなかったボランティア活動もできる。
また明るいうちに家に帰り、家族と散歩や外食もできるし、家事もできる!
経済効果
夕方5時過ぎにゆとり時間が増えることで、消費が増えることも期待される。
第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは、単純計算で名目家計消費が7500億円増えると試算。
しかしシステム変更による設備投資や労働時間などの条件によって効果が縮減される模様です。
サマータイムのデメリット
コンピューター問題
時間に関する全てのコンピュータープログラムの変更、航空・鉄道 等のダイヤ変更、交通信号機の調整などに膨大な時間と手間、コストがかかる。
またソフトウェア更新時にどさくさに紛れてサイバー攻撃が増える心配も。
社会的な混乱
時刻切り替え時に様々な混乱が予想される。特に一時的に交通事故が増えることもカナダブリティッシュコロンビア州が発表。(夏時間変更直後は前の週に比べて23%も増加)
残業時間の増加
まだ明るいうちに終了の時間となるため、特に日本では慣習で仕事をしてしまう(又はさせられる)。終了後にも顧客の対応等が生じる。
(滋賀県で平成15年に行われたサマータイム試行実験では参加者の 約4割が労働時間が増加したと回答)
健康への悪影響
特に切り替え時には睡眠不足と睡眠の質の低下により体内時計が狂い、以下のような様々な不調や疾患の原因にも。
・時差ぼけ
・虚血性発作、心臓発作の増加
・男性の自殺率の増加
・精神不安定、うつ病等
・皮膚がん(北欧等は心配ないのですが東南アジアやアフリカ等陽ざしの強い所では)
など計り知れない悪影響が指摘されています。
排気ガス
早朝のラッシュアワーの排気ガスが日中よりもずっと深刻だと言う学者もいます。
個人負担増
企業にとっては暑い時間帯の早上がりで省エネになりますが、オタク志向の人にとっては、自宅の電気代が増えることになりますね。
国全体としては果たしてどの程度の省エネになるのか疑わしい限り。
日本での導入
過去には
日本でも戦後GHQの占領下で昭和23年から26年(法改正は27年)まで実施。
でも残業が増える・寝不足になるということで27年占領終了次第正式に中止されました。
日本人には馴染めなかったのですね。
以下、9月28日・朝日新聞より
その後何回も法案提出の一歩手前までいくものの、提出することなく今日に至っています。
反対意見が多いという訳ではなく、その時々の他の重要案件に圧されて日の目を見ることが出来なかったのです。
今回は五輪組織委員会会長の森元首相から要望のもと安倍総理の指示によるもの。
超党派で法案提出を目指したものの無理とのこと。なんと可哀そうな生い立ちのサマータイムでしょう。
遠藤利明・東京五輪実施本部長は「オリンピックに導入したいのは山々だが、そのためだけではない。
低炭素社会をつくるひとつのきっかけとして(今後も)進めていきたい」と説明。引き続き検討されることになりました。(9月28日・朝日新聞)
地方の事例
国全体としてはなかなか進まない一方、地方自治体では様々な試行錯誤が行われています。
平成16年~ 北海道サマータイム
北海道は緯度が高く本州に比べて昼間の時間が1~2時間長いので、サマータイムを導入するのには適していますね。
時計の針をいじらないで出退勤時間を1時間早める時差出勤を全道一致で実施しました。
当初は評判が良かったものの、段々尻つぼみに、そして今はどうなっているやら何の音沙汰もありません。
平成15年には滋賀県庁で
平成20年には岩手県奥州市で
平成24年~28年には奈良県で
同様に実施されましたが、いずれも不評で取りやめになりました。
定着しない理由
なぜ日本では定着しないのでしょうか?
・日本は東西に細長く伸びた国で日照時間の差が大きく、同じ条件で時間設定しずらい。
・欧米に比べ夏時間の時期が短い(2~3カ月)ので必要性が低い。(欧米では8カ月)
・慣習で結局勤務時間が増える。
・省エネ効果が欧米に比べて薄い。(早く退社しても夕方も暑いのでどこかで冷房は必要)
・実施後の調査で体調不良の訴えが多くあった。等々
世界的評価は?
実施国
国連加盟国193ヵ国のうち約1/3の62ヵ国がサマータイムを実施しています。
欧州、アメリカを中心とした緯度の高い国々、オーストラリアなどのオセアニア地域、中東地域の一部、中米、南米諸国等。(東南アジア、アフリカなどはあまり実施されていません)
実施していたのに止めた国
主に健康上の理由で止める国が続出しています。
・カザフスタンは時間変更が健康へ悪影響を及ぼすとして廃止。
・ロシア政府は時計の針を動かすことでストレスとなり自殺が増えたと言って廃止。
世界的評価は賛成か反対か
第1次世界大戦の際、イギリス、ドイツで燃料費節約のために始まったサマータイム。その本家本元で今廃止の検討が強まっています。
省エネ効果が薄いうえに、健康への悪影響が大きいというのです。
EUでは今回のパブリックコメント調査で8割以上の市民が睡眠や健康への悪影響を理由に夏時間に反対しているとのこと。
そのためフィンランドがこの制度の廃止を提案、これを受けて近いうちに廃止に向かうと考えられます。
また睡眠不足による、精神的な悪影響を避けるためサマータイムを止めるように提案している心理学者も少なからずいます。
長い間利用されてきた制度ですが、もともと健康への影響を考えて作られたものではないので、ここにきて新たに健康と利便性の対比を迫られているのですね。
ところが省エネ効果も少ないとなるとどうでしょう。結果は明らかですね。
サマータイムの代わりに
コンピューターを夏時間に切り替える為の時間と手間があれば、新しいシステムを開発できるといいます。
その代わりに時差出勤やフレックスタイム制はどうでしょうか?時代は個性と柔軟性を求めています。
包括的に夏時間というのではなくもっとフレキシブルに!各自・各企業・各地域がそれぞれに合った形態で時間や健康、労働管理をするのが良いのではないでしょうか?
今一度考えなおす良いチャンスだと思いませんか?