Last Updated on 2023年12月16日 by admin
年々増加しているハラスメント問題、個人の問題としてではなく企業の問題として対策を講じることが、法や規則で求められています。
早急に対応しなければ従業員の士気が落ち利益損失に繋がり、また社会から信頼を失い会社存続の危機ということになりかねません。
その様なことにならないように、ここでハラスメント撲滅に対して企業が出来ることを提案します。
ハラスメントのない企業、社会を目指しましょう!
目次
ハラスメントとは
職場におけるいじめ、嫌がらせのことで、次のようなものを言います。
- セクシュアルハラスメント
- 妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント(一般にマタニティハラスメントと呼んでいます。マタハラ、育ハラ・パタハラ・ケアハラ等とも言われます)
- パワーハラスメント
- アルコールハラスメント
- モラルハラスメントその他
これらのハラスメントは悪意をもってする場合は誰が見ても明らかですが、実際は行為者がそれと意識しない場合も多く分かりにくいことがネックです。
受けた人がひどく傷つけばハラスメントになりますので、同じ言動でも受けた人によってハラスメントになる場合とならない場合があるのも問題を複雑化しています。
従って誰でも加害者にも被害者にもなる可能性はあると言えます。お互いに自分の問題として考えていきましょう。
ハラスメントは法律違反です
- セクハラは男女雇用機会均等法によって禁止されています。
- マタハラは男女雇用機会均等法と育児介護休業法によって禁止されています。
- パワハラは近々に法制化されます。
業務上の指導とパワハラの線引きが曖昧で難しいという理由で長い間法制化されませんでした。
が、ようやく厚労省は企業に対して防止策に取り組むことを法制化する方針を決めました。(11月16日朝日新聞)
ハラスメントと少子高齢化
それでは何故一見個人の問題に見えるハラスメントが企業の問題として捉えられるのでしょうか?
そこには少子高齢化問題が陰に見え隠れしています。
日本は世界に先駆け少子高齢化の道を突き進んでいます。
このままだとお爺さんおばあさんだらけになり働く人が少なくなってしまいます。
働ける人は誰でも働いてもらいたい、これが政府の考え方です。
ところが、古くからの日本の慣習と企業側の考え方で、結婚や出産を機に働きにくい環境となり、離職する女性が多くなっています。
そこには企業のまっとうな戦略的理由もありますが、マタハラによって追い出し作戦も多く行われています。
このようなことをなくし女性が結婚後も働きながら安心して出産し、次代の宝である子供たちを大切に育てられるようにと、男女雇用機会均等法・育児介護休業法が生まれたのです。
少子高齢化参照:誰でもわかる!少子高齢化問題と対策方法
離職理由参照
更にハラスメントは企業側にも大きな影響があります。
ハラスメントによる企業的損失は?
ハラスメントを受けた当事者は勿論精神的肉体的な被害を被りますが、企業にとっても侮ることは出来ません。
放置すれば甚大な被害となります。
- ハラスメントが起きたことで社内の雰囲気が悪くなり、士気が下がることで仕事の効率が下がり、利益損失を招きます。
- 職場環境悪化により個人の能力が十分に発揮できず、ひいては会社の損失に。
- ハラスメント対策をしないで放置すれば多くの犠牲者が出て、従業員の会社に対する信頼感がなくなり、優秀な人材が流出へ。
- ハラスメントが法律違反である以上、不法行為、債務不履行、安全配慮義務違反、労災認定や裁判等で社会的信用がなくなり、顧客を失う。更に人材流出、新たな人材も確保できなくなり、会社存続の危機を招く。
- そしてハラスメント被害者には企業として多額の損害賠償をしなければならない。
これらの理由からハラスメントは企業にとって諸悪の根源と考えられます。
ハラスメント撲滅のための対策
これらのハラスメントが起きないように下記のような措置を取ることが全ての事業主に法で義務付けられています。
- ハラスメントをさせないという事業主の方針を明確化し、周知・啓発する
→会社広報、企業手帳、パンフレット、朝礼等で - 相談に応じられる窓口を設ける
→社内、社外、電話、ネット等様々な方法で - 相談があった場合は速やかに事実関係を確認し被害者、行為者双方に適切に対処すると共に再発防止策を整える
→アンケート調査、聞き取り調査等利用 - ハラスメントの原因や要因を解消し、業務体制を再構築する
→企業のあり方を考え直したり(労働時間等)、教育・研修によってハラスメントの実態を知る(講演会、講習会、スライド、話し合い等) - 相談者・行為者・事実確認協力者のプライバシーを守り、これらのことを理由に相談者や協力者に不利益取り扱いは許さないことを全社員に周知させる
関係資料は下記からダウンロードできます。
労働局では企業のからの相談も受けています。教育用のビデオの貸出もしています。
具体例
「ハラスメント対策」と言われてもほとんどの企業にとっては初めてのことで、抽象的な説明では見当がつかず、暗中模索の状態だと思います。他社の具体例を参考にしましょう。
東京ガスグループの場合
「人権課題は円滑なコミュニケーションに尽きるという立場から、会社の「行動基準」に「人権の尊重と元気の出る職場づくり」という指針を明確に打ち出しています。
あらゆる職種から人権啓発推進リーダーを養成しているので、それぞれの職場の状況が直接わかるメリットが。
段階別研修、話し合い型研修、全体研修、少人数研修など様々な形態での繰り返し研修で効果的に。
ソニー損保の場合
相談窓口をたくさんつくることで、「社内に知られたくない」「親会社に知ってもらいたい」といった様々なニーズにも対応。
「しない・させない・ゆるさない」を全員に周知させる。
自分と相手とは違う、違うことが当たり前なのだという認識を持つことが大事。
派遣労働者を含めた全従業員を対象に、セクハラ・パワハラ・メンタルヘルスに関する実態調査(外部専門会社による匿名アンケート調査)を実施。
実施後には必ず「実施報告会」を開催しアンケートの内容を基に研修を行う。
具体的には「上手な断り方(アサーティブコミュニケーション)」や「仲間が困っているときの支援」等。
「企業理念と結びついたハラスメント対策」 ソニー銀行株式会社(厚生労働省)
最後に
健康社会学者河合薫氏は「パワハラがなくなれば職場が明るくなるのではない。
明るく元気な職場にはパワハラはない」と言っています。
お互いを認め合い、お互いを理解し合っている職場には、ハラスメントは起こりません。
他者と自分とは違います。黙っていては分かりませんね。
相手を理解しようとする心が相手の心を開くのです。
適切なコミュニケーションこそが明るい職場のキーワードであり、ハラスメント撲滅の源ではないでしょうか!